音痴な小鳥

 

 すごい音痴な小鳥がいました。

いつも林の中で、朝から晩まで大きな声で鳴いていました。

なかまの小鳥たちは、その鳴き方が変なので、いつも困ったものだと言い合いました。

「あんなひどい音痴では、ぼくたち鳥仲間の品格にかかわる。どうにかならないものかなあ」

 だけど、その小鳥はそんなことにはおかまいなしに、いつも同じように鳴いていました。

 ある日、村の子供たちが、この林に遊びにやってきました。なかに小さい子供たちもいました。

 幼稚園の先生からいつも、

「小鳥さんは歌がじょうずだから、小鳥さんのように歌ってごらんなさい」

と教えてもらっていました。

 小さい子供たちは木の上から聴こえてくるその小鳥の歌声をきいて、いつも練習をしました。

ところが、ある日、幼稚園の歌の時間のとき、子供たちの歌を聴いて先生はびっくりしました。

「みんなの音程がずれてるわ。誰のまねをしたのでしょう」

子供たちに尋ねてみると、小鳥さんのまねをしたことを話しました。

 またある日のことでした。

この村で一番、詩吟のうまいお百姓のおじいさんが、いつものように、家の近くの林の中で練習をしていると、どこからか変な鳴き声が聴こえてきました。

「ずいぶんひどい鳴き方だ。困った小鳥だな」

 はじめは気にもせずに練習をしていましたが、だんだんと自分の音程もおかしくなってきたのです。

 秋の詩吟コンクールのとき、とんだめにあいました。いつもの年なら上位入賞のはずなのに、音程がずれているので予選で落ちてしまいました。

 頭にきたおじいさんは、今度あの小鳥を見つけたら、撃ち落として焼き鳥にしてやろうと文句をいいました。

 音痴な小鳥は、ひさしぶりに町へ行きました。

町の公園へ行ってみると、たくさんの親子連れが来ていて、子供たちがブランコやシーソーにのって遊んでいました。

 噴水のそばのベンチでは、アベックや年寄りが腰かけて、池の中を泳いでいる鯉や金魚にエサをやっていました。

 公園の片隅で、ひとりのアコーディオン弾きが、子供たちに演奏を聴かせていました。小鳥も、そばの木の枝にとまって一緒に聴いていました。

 子供たちは、アコーディオンの伴奏を聴きながら、一緒に歌いはじめました。

それをきいて小鳥も歌いました。

 ところが、いくら歌ってもみんなと音程が合いません。それにアコーディオンの伴奏とも合わないのです。

「おかしいな。どうしてだろう」

なんども歌っているうちに、その理由がわかってきました。

「そうかぼくの歌い方がおかしいんだ」

小鳥はそのときはじめて、自分の音程がずれていることに気づいたのです。

小鳥は、なんだかはずかしくなってきました。いまのうちに治そうと思いました。

 そして夕方までみんなに合わせて歌っていると、みんなと同じように歌えるようになりました。

「よかった、よかった。これで村へ帰ってもは安心だ」

 小鳥はそういって町から出て行きました。

 

 

 

 

 

(未発表童話です)