電気が流れる黒板

 

 ネットゲームばかりに夢中になって、ちっとも勉強しない子供がいる学校がありました。

 先生たちは相談して、工場から特注の黒板を取り寄せました。

「この黒板を使えば、クラスの成績は上がるだろう」

 新しく取り付けられた黒板の前で、さっそく授業がはじまりました。

算数の問題が出されて、子どもたちが順番に黒板の前に立って問題を解きました。

 正解だと何も起こらないのですが、間違えてると50ボルトの電流が流れます。

 子供たちはビリビリが怖いので、それからは先生の授業を真面目に聞くようになりました。

 親からも子供たちの成績が上がったので、みんな喜んでいました。

 ところが困ったことが起きました。

 社会科の授業中、先生が歴史年号を書き間違えて100ボルトの電流が流れました。

「いやあ、驚いた」

 またあるときは、国語の授業中、啄木の名前を琢木と書き間違えた先生も100ボルトの電流が流れました。

 頻繁にそんなことが起こるので、先生たちも命がけで授業をしなければならなくなりました。

 工場に問い合わせてみると、

「黒板にはAI(人口知能)が取り付けてあるので、絶対に間違わないようにして下さい」

と言われました。

 どんな小さなミスでも見つけて電気を流すので、先生たちもビクビクしながら、

「前に使ってた黒板の方がよかったなあ」

とみんな後悔していました。

 

 

 

 

 

(未発表童話です)