クリーニングロボット

 

 ロボット発明家が、なんでもクリーニングするロボットを作った。このロボットに仕事をさせれば、家も庭も車も倉庫もきれいになった。さっそく使いたいという人がやってきた。

「どうぞ、お貸しします。1日5千円です」

 その人は、来月引っ越しするので、アパートをきれいにしたいのだった。さっそく持ち帰って使ってみた。

 バケツと雑巾、洗剤などを用意して、ロボットのスイッチを押して出て行った。

 ロボットは動き出した。自分で掃除機のスイッチを入れ、最初にゴミを取り除いていった。次は水道の蛇口をひねってバケツに水を入れ、ゴシゴシ壁や床、窓ガラス、天井を洗っていった。

 それが終わるとパソコンが置いてある部屋へ行ってクリーニングをはじめた。しばらくして胸に埋め込まれたランプが当然点灯し、ロボットの行動がおかしくなった。ロボットはパソコンのそばへ行くと目からセンサーを出し、しばらくじっと身動きもしなかった。それが終わると再びクリーニングをはじめた。

 夕方になりクリーニングは終わった。住人が帰って来て部屋がとてもきれいになっていたので驚いた。

「すごいロボットだ。また借りよう」

 ある日のこと、またロボットを借りたいという人がやってきた。 

 その人はマンションの住人だった。10年も住んでいたので部屋はずいぶん汚れていた。ゴミもだいぶ溜まっていた。

「じゃあ、頼むよ」

 ロボットのスイッチを入れて部屋を出て行った。

 ロボットはさっそくクリーニングをはじめた。最初にゴミを選別してビニール袋の中に入れ、部屋の掃除をはじめた。しばらくしてから胸に埋め込まれたランプが点灯し、またロボットの行動がおかしくなった。

 ロボットは机の上に置いてあるパソコンのそばへ行くと、目からセンサーを出した。しばらくじっとしていたが、それが終わるとまた掃除をはじめた。

 夕方になって住人が帰って来た。部屋がピカピカになっていたのでとても喜んだ。

「思ってたとおりだ。役にたつロボットだな」

 そうやってこのロボットはたくさんの人が借りにやってくるようになった。

 ところが2週間ほどたったある日、発明家の家に苦情の電話が入るようになった。

「おかしいんだ。大切な個人情報が盗まれた形跡がある。ネット銀行やネット投資に使うパスワードやIDが無断で使われているんだ。ロボットに掃除を頼んだすぐあとなのだ」

 発明家はそんなこと知らないと突っぱねていた。

  ロボット発明家は悪人だった。クリーニングロボットを使って住人の家のパソコンから個人情報を集めていたのだ。貸したロボットに仕事をさせながら無線で指示をしていたのだ。

 3か月の間に40件くらいの個人情報が盗まれた。その後発明家は行方をくらました。

 しかし、その発明家はとうとう捕まってしまった。別の町のある探偵事務所にクリーニングの仕事に行ったとき、腕のいい私立探偵がそのロボットの行動に不信感を持ち、その現場を取り押さえたのである。

「最近、個人情報が盗まれる事件が多発しているが、やった犯人はこいつだな」

 ロボットを詳細に調査して、発明家の居場所も突き止めて事件は無事に解決した。

 

 

 

(オリジナルイラスト)

 

 

 

 

(未発表童話)