豪雪にあったサンタクロース

 

 あしたは楽しいクリスマスイブです。サンタクロースのおじいさんは、山の家の中で、子供たちに贈るプレゼントを袋の中に詰めたり、トナカイに餌をやったり、橇の点検をしたり大忙しです。

「あしたは富山、石川、福井を回らなければいけないんだ。でも雪の予報だな」

このサンタクロースは今年は北陸3県を担当することになっていました。

 週間天気予報を見ても雪マークでいっぱいです。でも仕事を休むことはできません。

 翌朝、目を覚ますとびっくりしました。

「なんだあ、この雪は」

 昨夜のうちに、大雪が降って家の屋根まで雪が積もっています。これでは外に出られません。

「早く雪をかいて、出発しないと今日中に回れない」 

 窓も開かないので、部屋の煙突から外へ出ました。

「家の雪かきは後まわしにして、問題は小屋の橇を出すことだ」

 小屋へ行ってみました。小屋も雪で埋もれて見えません。

「早く出そう」

 スコップを持ってきて雪をかきはじめました。

しばらくして、小屋の扉が見えてきました。小屋の中は静まり返っています。

 扉を開けてみました。

 二頭のトナカイが半分凍ったようになって藁の中にうずくまっていました。

「大変だ。凍死する前に、生き返さなければ」

 家に戻って、ミルクを沸かして持ってきました。

「さあ、これを飲むんだ」

 トナカイの口の中に温かいミルク流し込みました。

 しばらくするとトナカイは意識を取り戻しました。全身マッサージもしてやって、元気になりました。

「さあ、早く出掛けよう」

 小屋から橇を出して、サンタクロースは雪の道を滑って行きました。村々を通り、やがて富山の町が見えてきました。

 町に入ると、除雪のために道路は渋滞して、なかなか先に進めません。

「困ったな。まだたっぷり仕事が残っているんだ」

 こんなときは空を飛んだりするのですが、雪が強まって視界が悪く、電線にひっかかったり、電信柱にぶつかったりする危険があるのでそれも出来ません。

 横道に入ったりしながら家々を回りました。

 富山を回り終えて、次は石川に行きました、ここでも国道は大渋滞でした。

「ダメだ、高速道路で行こう」

 北陸自動車道は雪で通行止めでしたが、自動車が走っていないので橇でスムーズに行けるのです。料金所のガードを飛び越えて、中へ入りました。

「さあ、急いで行こう」

 風が冷たくて寒いので、ときどきパーキングエリアに入って、自動販売機コーナーでホットコーヒーを買って飲んだりしました。

 家が見えてくると、高速道路の塀をジャンプして乗り越えました。

 国道を走りながら、町へ行ったり、山へ行ったり、海辺の町へも行ってプレゼントを配りました。

 夕方になると、次の寒気が入ってきて猛吹雪になりました。

 視界が悪く、対向車とぶつかりそうになったので、ランプに火を灯して走りました。

 福井を無事に回り終えると、また高速道路で帰ることにしました。石川を走っていたとき高速道路沿いに温泉があったので、そこへ行くことにしました。

 暖かい温泉にゆっくり浸かって、マッサージもしてもらい一日の疲れをとりました。そしてまた高速道路で帰って行きました。

 今年のクリスマスは大雪のために、ずいぶん苦労しましたが、予定どおり北陸3県を全部回ることが出来ました。

 仕事を終えて家に帰って来たのは明け方でした。

 山の家もずいぶん雪が積もっていて、雪かきが大変でした。

「来年のクリスマスは晴れだったらいいなあ」

 ようやく雪かきが終わって食事を済ませると、サンタクロースは死んだように眠りにつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

(未発表童話)