危険な発明家

 

 町はずれに一軒の家があった。家には発明家がひとりで住んでいた。半年前まで服役していたが、出所してから引き続きロボットの制作をしていた。

 子供の頃からアイディアマンで、誰も思いつかないようなユニークなロボットを作っていた。

「今度は犬ロボットと猫ロボットだ。人口知能を取り入れたものだから、きっと役に立つ」

 毎日制作に励んで、ある日完成させた。

「このロボットを働かせて、のんびり楽して暮らそう」

 ある夕方、猫ロボットを呼んで指示を与えた。

「いいな、教えたとおり、夕飯のおかずをもってくるんだ」

 猫ロボットは家からすばやく出て行った。

 近所をまわりながら、夕飯の匂いを嗅いでいたが、一軒の家の塀を乗り越えると庭へ侵入した。

 開いた窓の中を覗くと、食卓に刺身のパックが置いてある。猫ロボットはすばやくパックをくわえるとその家から出て行った。

「いいこだ。よくやった」

 しばらくすると、犬ロボットが帰ってきた。

 犬ロボットに指示したのは、お米屋さんへ行って、主人がいないときを見計らって2キロのお米の袋をくわえてくることだった。 

 犬ロボットは指示どおりお米の袋をくわえてきた。

「よくやった。これで今夜の食事は整った」

 次の日も二匹のロボットをデパートへ行かせて、食料品を中心に持って来させた。

 ある日、ハトのロボットを数羽作った。空を飛ばせるので難しかったがやっと出来た。

 ハトたちを呼んで、

「いいな。デパートへ飛んで行って、石鹸とシャンプーとタオルを持ってくるんだ」 

 ハトロボットはいわれたとおり、デパートへ飛んで行くと、お客のあとからデパートの中へ入っていった。

 生活必需品のコーナーへ行き、商品棚から石鹸、シャンプー、タオルをくわえると、出口へ行き、お客のあとから出て行った。

「よくやった。これで風呂にも入れる」

 ロボットたちは、男の好みをすっかり学習していたので、食べ物なら肉よりも刺身や焼き魚、お米ならコシヒカリやヒノヒカリなどを持ってきた。

 ある日、犬ロボットがスーパーからお米の袋をくわえて、交番の前を歩いていたとき、中から警官がそれを見つけて、

「あの犬、どこへ行くんだ、あやしいな」

 最近、デパートやスーパーで万引きが相次いで起きていたので、同僚と一緒に犬のあとをつけて行くことにした。

 犬ロボットは、人間の職業について何も学習をしていなかったので、うしろから警官がついてきても知らん顔だった。

 犬ロボットは町はずれの一軒の家の中へ入って行った。

 警官は玄関のチャイムを鳴らした。

「どなたですか」

「交番の警官だが」

 男は驚いて玄関の戸を開けた。

「変な犬がここへ入るのを見た」

「変な犬って、どんなですか」

「お米の袋をくわえた犬だ」

 そのときさっきの犬が現れた。

「この犬だな」

 犬はしばらくおとなしく座っていたが、おもむろに立ち上がると、警官のピストルをくわえようとした。

「こいつ、やめんか」

そのとき猫ロボットとハトロボットが部屋から飛び出してきた。

 もうひとりの警官のピストルも奪おうとした。

 男は今度はピストルを奪って銀行強盗を企んでいたのだ。

 犬も猫もハトも指示に従ったのだ。

 男はすぐに逮捕されて、また服役することになった。

 

 

 

(オリジナルイラスト)

 

 

 

(未発表童話)