大魔神のいる島

 

 昨夜、こんな夢を観た。

 軽ヒコーキを飛ばしていた。天気が良かったのでまわりの景色がよく見えた。ところが当然エンジンの調子がおかしくなった。

「中古のヒコーキはやっぱりダメだな」

 しかたがないのでどこかの無人島へ不時着することにした。

前方に砂ばかりの島が見えた。その島へ降りることにした。

 ブーンと高度を下げて島に降りた。ヒコーキは砂の上を滑りながらどうにか止まった。プロペラが曲がってしまったので、あとから修理しなければいけない。

 止まった場所に、巨大な埴輪の像があった。

「どこかで見たことがある像だな。あ、そうだ、大魔神だ」

 思ってると、空模様が怪しくなった。突風が吹いた。

「まさか、像が怒っているのかな」

 やがてすぐに天気が回復して、太陽が出て来た。

「さあ、修理をはじめよう。何日もこんなところにいられない」

 エンジンを調べた。スロットルのワイヤーが緩んでいた。すぐに締め直してその夜は早めに寝た。

 翌朝、曲がったプロペラをハンマーで叩いて直しているときだった。突然地震が起きた。

「ハンマーの音がうるさいのかな」

 もう一度叩いていたとき、また地震起きた。

「やっぱりだ。うるさくて眠れないんだ」

 しかたがないので、プロペラを担いで、島の端へいって修理を続けた。

 音は聞こえるが、さっきよりもましだったので地震は起きなかった。

 丸一日、ハンマーを叩いたので、ずいぶん手がしびれた。でもなんとかもとに戻すことが出来た。

  夕方、釣り竿を持って、浜へ魚を釣りにいった。昨日から何も食べていなかったので、お腹が相当空いていた。二時間くらで10匹ほどアジとキスが釣れた。

 埴輪の像のそばで火を起こして、魚を焼いた。

「もうすぐ焼けるぞ」

 そのとき、像がギシギシと少し動いた。煙が像の周りを取り囲んでいる。

「そうか、煙たいんだな」

 火を消して海水で洗い流した。

 夕食が終わって、その日も早く寝た。

 翌日、エンジンをかけた。大きな音だ。スロットルを回しながらエンジンを温めてから全開にした。機体が少し動いた。

「さあ、飛ぶぞ」

 思ったとき、凄い地震が起きた。空は真っ暗になり、突風が吹き、雷が鳴りだした。

「はやく脱失しよう」

 エンジンをそのまま全開にしながら、やがて機体が砂の上を走りだした。

 うしろを見たときだった。埴輪が立ち上がった。それまで優しい顔をしていた像が変身して大魔神の恐ろしい顔になった。

「祟りだ!」

 捕まらないように、エンジンを吹かして、砂を上を走った。でもなかなか離陸できない。振り返ると、地響きをさせて大魔神が歩いてくる。

 そのうちに、雨は降って来るし、雷は鳴るし、風は強いし、すごい天気になった。

海を見て驚いた。海が高く盛り上がって二つに割れている。もうすぐ大津波がこの島を襲う。

「離陸しろ、離陸しろ」

叫びながら、走り続けた。でもまだ離陸できない。

 後ろから追いかけてきたはずの大魔神が目の前に立っていた。凄い目つきで睨みながら、腰の剣を引き抜いた。

 そのとき奇跡が起きた。

機体が浮いたのだ。大魔神のすぐ頭の上を通り過ぎた。それから急上昇して、雲のすぐ下まで達した。凄い風と雷の中で、機体はずいぶん揺れたけど、無事に水平線の向こうへ飛んで行った。海はしばらく荒れていた。

 まるで特撮映画のような夢だった。

 

 

 

                                        (オリジナルイラスト)

 

 

 

(未発表童話です)